磁場駆動形状記憶合金粒子分散樹脂複合材料の磁場駆動歪みの向上のために、昨年度は弾性拘束に着目し、磁場駆動するNiMnGa単結晶を用い、マトリクスとNiMnGa粒子の体積率を変え、マイクロCTにより材料内部の粒子の形状を直接観察することで、マトリクスの拘束が強い場合には磁場による変形が起こらなくなることを示した。本年度は、マトリクスの弾性拘束を低下させる空孔の導入を行った。ここで、空孔として、体積的にほぼ空孔とみなせる発泡スチロールに着目し、発泡スチロールの量と分散状態を制御し磁場動作に与える影響を調べることとした。まず、発泡スチロールをシリコーンに分散させ、が目的通り低下することを確認した。次に、それに単結晶NiMnGa粒子を導入し、発泡スチロールの体積率が増加することで磁場印加による変形が起こることを見出した。また、発泡スチロールの分散状態として、磁場方向に対しNiMnGa粒子と直列および並列としたが、配列の影響は認められず、したがってマトリクスからの弾性拘束の強さが支配的因子であることを明らかにした。次に、NiMnGa粒子方向に対し印加磁場方向を回転させたところ、ドメイン変換のための磁場強度は印加方向に依存し、<111>方位では磁場動作が認められなくなることを明らかにした。粉砕で作製した多粒子分散複合材料では磁場で変形しない不活性の粒子があることになる。このため磁場で変形する活性粒子と不活性粒子を混在させ、変形挙動を観察した結果、不活性粒子の存在により活性粒子のまわりのポリマーの見かけの弾性率が上昇し、このため弾性拘束がより強くなり、このため単体では変形する活性粒子であっても不活性粒子の存在により磁場印加で変形しない不活性粒子となってしまうことを明らかにした。これらから磁場駆動形状記憶合金粒子分散樹脂複合材料の材料設計指針を得ることができた。
|