研究概要 |
透明導電性薄膜材料はタッチパネルやディスプレイ分野に幅広く利用され、今後、その重要性は一層高まると予想される。現在、透明導電性薄膜材料にはITO(インジウム/スズ酸化物)やATO(アンチモンドープ酸化スズ)などが用いられているが、インジウムやアンチモンは供給量や毒性に不安があり、代替素材が求められている。本研究は、インジウム代替素材に関し、導電性高分子/汎用高分子/ナノ粒子複合材料より、透明性かつ導電性に優れた透明薄膜材料、そして、その応用品、例えば透明導電フィルムの開発を目的とする。本年度は導電性高分子としてスルホン化ポリアニリン(PAS)、汎用高分子として水溶性ポリビニルアルコール(PVA)、添加ナノ粒子として一次粒子径が10〜20nmの水分散性ポリエステル(PEs)、酸化チタン2種(TiO_2-H, TiO_2-L)そしてアルミナ(Al_2O_3)を用い、導電性高分子/汎用高分子/ナノ粒子混合スラリーの調製、高圧湿式粉砕、スラリー中ナノ粒子径・ゼータ電位測定、そして調製スラリーのPETフィルム上へのコート(厚み>2μm)・乾燥後、薄膜表面の導電性(表面抵抗)を測定し、以下の結果を得た。 1)本年度購入したゼータ電位・粒径測定システムELSZ-2により、以下の事柄が明らかとなった。 (1)湿式粉砕後のPAS/PVA/ナノ粒子系スラリー中のナノ粒子平均粒径は100〜200nmにあり、それらか得られる薄膜フィルムは透明性に優れる。 (2)PAS/TiO_2においてPASはTiO_2の表面に吸着しTiO_2の分散性に寄与するが、この系にPVAが加わると、PASはTiO_2表面から脱離し、PVAが選択的に吸着する。 2)PAS/PVA/ナノ粒子系薄膜の特性評価から以下の事柄が明らかとなった。 (1)同一容積のナノ粒子量では、TiO_2-LのほうがPEsよりも高導電性の薄膜が得られる。 (2)TiO_2-HのほうがTiO_2-L系より高導電性の薄膜が得られる。 このように、PAS/PVA/ナノ粒子系スラリー中におけるナノ粒子の平均粒径・電荷状態、そして薄膜の導電性がナノ粒子に依存し、特定の酸化チタンTiO_2-Hが高導電性を与えることを明らかにした。
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