研究概要 |
1.供試鋼の合金設計と製造 0.4%C-1.5%Si-1.5%Mn鋼をベース鋼としたとき,0.5%Cr-0.2%Moの複合添加が最も優れた残留γ特性とベイニティックフェライト組織を生じた.10ppm%B添加も同様な組織を得ることが出来るが,100ppmN添加鋼の効果は認められなかった. 2.新規の鍛造熱処理(AFT処理)による超微細粒化技術の検討 0.5%Cr-0.2%Moの複合添加は最も優れた強靭性を示した.そのときの熱間鍛造ひずみは50%,オーステンパー温度は350-375℃であった. 3.BF/M組織率の同定法の確立とγ_Rへの炭素の濃化機構の検討 Ms点以下でオーステンパー処理を施し,BF/M組織率を低くすることにより,変形強度は著しく増加したが,残留γ中の炭素濃度は低下した.BF/M組織率が0.5〜0.9の範囲において,シャルピー衝撃吸収値は高く,衝撃遷移温度は低くなった.このとき,残留γの安定性が高いことが重要であった. 4.新規TRIP鋼(TM鋼)の開発 γ域焼鈍後室温まで急冷後,炭素濃化処理を施したとき,残留γ中の炭素濃度は著しく増加する現象を発見し,これをベースに新規の低合金TRIP鋼(TRIP型マルテンサイト鋼;TM鋼)を開発した.また,TM鋼の炭素濃化機構をTEM観察によるセメンタイト析出挙動より提案した.
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