研究概要 |
研究目的を達成するために研究実施計画に基づき、2008年度はナノヘテロCo-M-O系複相膜を系統的に作製し(M=Ti,Nb,Ta)、以下の成果を得ることが出来た。 1)3つの組成系膜の共通の結果:a)化学量論比のM-O化合物組成付近にナノヘテロ複相構造を示す膜を得ることが出来た。b),a)の組成付近に光透過特性、誘電特性および磁気特性とを併せ持つ膜を見出すことが出来た。 2)個別の組成系膜の特性:a)Co-Ti-O系膜:ナノヘテロ複相構造Co-Ti-O膜は、Co-TiOとCo-TiO2との2つの組成付近に存在する。磁化の大きさと電気比抵抗の双方が、それらの組成付近で最大値および最小値をとる。特筆すべきことは、双方の組成付近の膜がトンネル型の磁気抵抗効果(TMR)を示す。その最大値は、双方ともMR=10.5%である。この値は酸化物系ナノグラニュラー軟磁性膜中最大のMR値である。MRの最大値を示すCo濃度は、Co-TiO2系膜では45at.%Co付近であり、Co-TiO系膜では63at.%Co付近である。Co-TiO2膜の結果は従来のナノグラニュラー系TMR膜のそれとほぼ同じであるが、Co-TiO系膜の結果はナノグラニュラー軟磁性膜のそれとほぼ同じ値である。今後、膜構造を多いに検討する必要がある。b)Co-Nb-O系膜:本系膜のMR特性も化学量論比の化合物組成膜付近で観察することが出来たが、その値は高々、7.5%である。Co<50at.%の膜は全て超常磁性的挙動を示し、18at.%Co付近で磁化(14kOe,R.T.)が零になる。非晶質Nb2O5膜の比誘電率は13程度(100kHz)であるが、膜中のCo濃度の増加と共に増加し、35at.%Co付近で約28となる。光透過特性はCo濃度の増加と共に低下し、Co<40at.%では紫外領域でも10%以下となる
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