研究概要 |
Fe-30Mn-(6-x)Si-xAl,x=0,1,2,3wt%の4組成合金試料に対して引張試験、動的熱機械試験(DMA)による相変態挙動調査、および各種顕微鏡による変形組織観察を行った。変形組織観察は、0.2%〜10%の範囲で段階的に引張変形を施した試料に対し、光学顕微鏡、EBSD、AFM、TEMを組み合わせたマルチスケール組織解析手法を用いて行った。その結果、Ms点が室温付近にある0%-Al合金では、ほぼ全ての粒で塑性変形初期においても応力誘起εマルテンサイト変態が支配変形因子であるが、Al量が増加してMs点が低下(1%のAl増加により約50℃低下)するに従い、変形様式への応力誘起変態の寄与率が低下し、3%-Al合金中ではほとんどマルテンサイト変態を示さなくなる。3%-Al合金の初期変形組織(引張ひずみ0.2%)において、シュミット因子が高い<112>{111}シアー系を含む粒は、その晶癖面上にプラナーすべりが生じていることを示す直線的な表面レリーフが観察された。TEM観察では、複数の{111}面上の転位が公差する形で高密度に存在する帯状の領域と、一部に極めて薄い変形双晶の存在が認められた。この結果と応力-ひずみ曲線とから、降伏応力の支配因子は、0%-Al合金ではεマルテンサイト誘起応力であるが、3%-Al合金では従来言われていたような双晶誘起応力ではなく、プラナーすべりのCRSSであると考えられる。
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