CPP-GMR素子は高密度ハードディスク用読み取りMRヘッドとして有望であるが、現状では十分なMR比が得られておらず、低い電気抵抗を保ちながら高MR比を実現することが求められている。ハーフメタルとなるホイスラー合金をCPP-GMRに適用することにより高いMR比が実現されるものと期待される。本研究では高いスピン分極率を持つと期待されるホイスラー合金、Co_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>(CFAS)、及びco2MnSi(CMS)を強磁性電極として用いたスピンバルブ型CPP-GMR素子を作製し、そのMR特性を調べた。 CPP-GMR素子の積層構造はMgO(100)基板上に下からCr(10)/Ag(200)/FM(20)/Ag(5)/FM(5)/CoFe(2)/IrMn(10)/Ru(8)(数字は厚さ、nm)ただしFMはCFASまたはCMS、である。 断面TEM観察により上部ホイスラー合金層までのエピタキシャル成長が確認された。CFASはB2構造であり、CMSはL21規則構造を持つことがわかった。微細加工を行い磁気抵抗を測定したところCFASを用いた試料では室温でMR比12.4%、CMSを用いた試料では11.8%のMR比がそれぞれ観測された。測定温度を下げるとCFASを用いた場合にはMR比は単調に増加し、約10Kで30%となった。これに対してCMSを用いた場合は100Kで22%程度まで増加するが、より低温ではかえって減少する結果となった。CMSからなる試料では磁化測定の結果50K以下の低温で90゜の層間磁気結合が示唆されており、このことが反平行の磁化状態を妨げる結果MR比が低下している可能性がある。 構造解析の結果現状ではホイスラー合金の規則化が十分に行われていないと考えられ、今後プロセスの最適化等によって合金の規則度を向上させることによりさらなるMR特性の向上を目指す。
|