研究概要 |
本研究は,非溶融固体粒子による革新的厚膜・部材創製技術としてのコールドスプレー法の基盤確立を目的とし,(1)プロセス因子の最適化による技術の高度化,(2)粒子/基材間接合機構の解明によるプロセス基盤の確立を目指したものである。最終年度の本年度は,これまでの結果を集約し総括を行った。このため最適形状寸法の自製ノズルを用い,各種成膜条件の下に各種合金,チタニア等各硬質粒子をSUS304鋼等の各種基材上に投射し,成膜可能性の限界に挑戦した。また,投射粒子の基材への付着状況を粒子/基材界面における両材料塑性流動挙動としてTEM観察した。得られた結果を基に硬質粒子の基材への付着機構を考察した。 その結果,Heを用いるまでも無く空気を作動ガスとする適正条件において粒子の付着成膜が可能であった。硬質金属粒子の投射においては,基材表面に凹部形状となる塑性変形が認められ,特に粒子/基材間せん断すべりの大きな粒子底面周辺部界面での健全な付着が認められたのに対し,せん断すべりの小さな衝突中心には弾性衝突による粒子/基材界面剥離現象が認められた。一方,チタニア粒子の場合には基材変形は無く,粒子自らのサブグレインへの微細化に伴う新生面の現出が基材への付着をもたらす可能性を国内外に先駆けて明らかにした。これらの結果より,粒子/基材界面には衝突中心からの距離に応じた付着強度特性の分布が存在する新規事実を明らかにした。今後は,このような強度分布の存在を認識しながら適正投射条件を選定することにより,高品位な成膜の可能性が期待される。 以上の結果を総括し本研究では,空気を媒介ガスとするコールドスプレー技術の高度化,ならびに粒子/基材界面接合機構の解明を基とするプロセス技術基盤確立の可能性を明らかにした。
|