研究概要 |
本研究では,木材の成形加工における加工条件,すなわち軟化および破壊(粉砕)状態,そして,その後の流動・固形化のメカニズムを解明すると共に,木材の塑性加工の手法による複雑形状製品の成形技術を確立することを目的としている. 平成20年度は,基礎的事項である木材の流動・固形化のメカニズムの解明を行った. (1)木材の軟化・破壊挙動:木材が軟化・破壊→流動→固形化をたどる本成形技術においては,金型内における木材の軟化・破壊状態が重要な因子となる.そこで,木材の切り出し部位(心材,辺材,晩材,早材),寸法・形状,含水率を変化させて,種々の条件(温度,圧力,圧縮方向)で,圧縮成形を行い,木材の軟化・破壊挙動に対する種々の影響因子の影響を明らかにした.(2)木材の流動特性の把握:各種の条件で軟化・破壊された木材に対して,含水率,温度,加工力および静水圧を変化させて成形実験を行い,その流動特性を検討した.その結果,高含水率および高温ほど流動性が高まり低圧力で金型内に充填できることを明らかにした(3)固形化のメカニズムの把握:高含水率および高温ほど流動性が高まり低圧力で金型内に充填できるが,得られた成形体は冷却の際に密度低下や破損が生じた.これを解決するために,成形終期に背圧を負荷する方法を考案し,良好な成形品が得られる加工条件を検討した.その結果,30分の煮沸を行っても形状変化しない固形化した成形品が得られることを明らかにした.(4)成形体の機械的特性の検討:成形体の機械的特性として硬さ試験,かさ密度測定した.成形体は,ほぼ均質で高密度であり,また硬質プラスッチクよりも高い硬度を示した.実用化が可能となる製品を成形する加工条件が確認できた.
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