研究概要 |
準安定オーステナイト相を有する超微細粒鋼を作製し,超微細粒材の延性改善に有効であると考えられるTRIP現象を明らかにすることを目的として実験を行なった.添加C量の異なるFe-24wl.%Ni-(0.0 0.3)wl.%C合金に,ARBを施すことにより,準安定オーステナイト相を有する超微細粒材を作製した.作製した超微細粒オーステナイト鋼の機械的性質を評価するために引張試験を行った.その結果,添加C量の多い合金のARB材ほど,高強度,高延性を示した.また,特に高延性を示したFe-24wl.%Ni-(0.2, 0.3)wl.%C合金は,降伏後に加工硬化率の小さな領域が存在する応力ひずみ曲線を示し,この領域では試料表面にLuders bandの伝播が観察された.特に大きな伸びを示したFe-24wl.%Ni-(0.2, 0.3)wl.%C合金の引張試験前後の相定量を行ったところ,引張試験後では,引張試験前に対しマルテンサイト相が増加しており,引張試験中に,加工誘起マルテンサイト変態が生じていることが明らかとなった.従って,Fe-24wl.%Ni-(0.2, 0.3)wl.%C合金が示した大きな伸びは,TRIP現象によるものであり,ARBにより作製した超微細粒材においても,TRIP現象は発現することがわかった.
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