粒径1μm以下の超微細粒あるいはナノ結晶オーステナイト母相からのマルテンサイト変態挙動を明らかにすることを目的として研究を行なった。「粒界だらけ」の組織である超微細粒あるいはナノ結晶母相からのマルテンサイト変態は、従来の粗大結晶粒母相からの相変態とは大きく異なると考えられるが、全く研究されていない。平成21年度は、Fe-24Ni-0.3C合金を用い、通常粒径オーステナイト材(平均粒径約20μm)と、600℃でのAIB(accumulative roll bonding)法を用いた巨大ひずみ加工により作製した超微細粒オーステナイト材を用意し、そのマルテンサイト変態挙動を調べた.結晶粒超微細化により、マルテンサイト変態開始温度が低下することが明らかとなった.また、加工誘起マルテンサイト変態挙動も、通常粒径材と超微細粒材では、特に強度-延性バランスの生じ方等に大きな違いがあることが判明した。その理由を明らかにするために、加工誘起により生じたマルテンサイトのそのバリアント解析を開始した、さらに、ARBにより作製した超微細粒材を500℃近傍で保持すると、予期していなかったBCC相への等温変態が生じ、これはベイナイト変態であることが示唆された.また、600℃でAIBにより超強圧延した準安定オーステナイトの集合組織は、通常圧延では現れないTavlor方位を示すことも明らかとなった.
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