研究概要 |
高温材料も対応可能な摩擦攪拌装置を用いて,炭素量の異なる炭素鋼に対して摩擦攪拌プロセスを施した。供試材として,S12C(0.12%C)、S50C(0.5%C)、S70C(0.7%C)および過共析鋼のSK5(0.85%)を用いた。回転ツールはこれまで,研究者代表等が開発,最適化を行ってきたWC-Co合金およびWC-Cu合金を中心に検討した。ツールの回転速度および接合速度を制御することによって,接合中の温度を650~900℃の範囲で制御した。具体的には,ツールの回転速度は400rpmを中心に設定し,接合速度を25~600mm/minと変化させた場合と、接合速度を100mm/minを中心とし,回転速度を100~400rpmで変化させた場合の2通りの実験を行った。また,熱電対を用いて,各条件におけるプロセス中の回転ツール直下の温度を測定した。 この際,プロセス温度を650~723℃のA_1点以下とした場合には,炭素量に関係なくマルテンサイトを生成せず,強度,延性,靱性に優れた極めて微細なフェライト-球状セメンタイトを基本とした微細組織を形成し、安定した継手特性が得られた。一方、温度がA_1を超えた場合には、S70C以上の高炭素鋼においては、マルテンサイトが生成し、ある程度の継手強度は得られるものの、伸び値が大きくばらつき、安定した特性は得られなかった。 一方、低炭素鋼においては、A_1以上では、フェライトを主体に部分的にパーライト組織が観察されるのに対し、A_1以下で接合した場合には、フェライトの粒界にセメンタイトが微細に分散した組織となった。
|