研究概要 |
[1] 合成繊維上への硬質炭素膜のCVD実験 ポリエステル,レーヨンなどの熱に弱く,導電性の無い化学繊維に,アルコール溶液を用いて硬質炭素膜を化学蒸着する実験を行った.均質な硬質炭素膜を化学繊維に蒸着するためには,次項[2]のCVD挙動の理論的解析が本質的で不可欠であり,本年度は次項[2]を重点的に行った. [2] 固体表面上の液中プラズマ泡を介したCVD挙動の理論的解析 CVDプロセス中のプラズマおよびプラズマ泡の観察をハイスピードカメラ(現有)によって行い,そのとき蒸着された膜の被覆率をEDSによって行った.固体表面上の液中プラズマ泡の挙動が解明された.液中プラズマCVDを均質に行うための条件は二つあり,一つは液体と基板の濡れ性が適度な値であること,つまり,プラズマ泡が基板に接触した際に,適度な液膜が形成されることである.接触角数値としては,20°~40°が適正である.もう一つの条件は,プラズマ泡の発生と消滅の周期に対する,プラズマと基板の接触時間と液膜による基板の冷却時間の割合を適正にすることである.プラズマの熱量を投入電力により調整し,さらに,プラズマと基板の間の距離も調整して,プラズマと基板の接触時間と液膜による基板の冷却時間の割合を1:1程度にする必要がある. [3] 化合物半導体の形成原理の解明 ダイヤモンドや,炭化珪素,窒化アルミニウムなどの化合物半導体を液中プラズマを用いて成膜するための化学反応の制御原理を解明した.本項目は交付申請書に記載のダイヤモンド,窒化アルミニウムの成膜のために不可欠の事項であるため,基礎的研究ではあるが,行った.液中プラズマ中では大きい電気陰性度の原子と小さいイオン化エネルギーの原子が優先的に化学反応することがわかった.窒化アルミニウムを析出させるためには,Mgなどの還元剤を用いてプラズマ中の酸素を取り除くことが必須であることがわかった.
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