PVD装置により、DLC、TiN、CrN、TiO_2の硬質薄膜を1~2μmの膜厚でステンレス基板に成膜した。次に硬質薄膜を被覆した基板をフェムト秒レーザー加工システムの精密3軸ステージに設置し、ステージのスキャン速度等を制御しながら、フェムト秒レーザーパルス(1kHz)を約350μmのスポットで平面(15mm×15mm)上に照射した。レーザーの出力(100~600mW)及びスキャン条件を変化させながら、平面状にほぼ均一にナノ構造を加工する条件を明らかにした。さらに、レーザー照射によるDLCのGCへの改質効果を明らかにするため、鏡面研磨されたGC基板のナノ加工の最適レーザー条件を明らかにした。 ナノ構造を平面状に各種条件で加工したDLC、TiN、CrN、TiO_2薄膜およびGC基板に対し、ボール・オン・ディスク型摩擦摩耗試験機で摩擦係数の変化を測定した。超硬と軸受鋼のボールを用いて0.5~10Nの荷重で測定したところ、DLCとGCが他の硬質薄膜より摩擦係数が0.1~0.2とかなり小さい値を示した。軸受鋼ボールに対しては未処理時にはGCが最も小さい値を示すが、レーザー照射によりDLCがGCに改質するため、レーザー照射後は、両者の値はほぼ等しくなった。次に、ダイヤモンドチップによる1000μN程度の超微小荷重域のナノスクラッチ試験を行った。未処理時にはDLCの摩擦係数が0.06と最も小さいが、レーザー照射により摩擦係数は単調に増加し、他の窒化物や酸化物も同様な傾向を示した。ただし、GCはアブレーション閾値に近い強度でレーザーを照射すると摩擦係数が0.05と最も小さくなり、その後レーザー強度の増加と共に単調に増加した。実荷重域で摩擦係数が最も小さいMoS_2薄膜は、微小荷重域では摩擦係数が大きくなることが本研究で判明しており、レーザー照射により、GCが極めて小さい摩擦係数を示すことは、ナノ領域の摩擦係数を最小化するための新技術として今後の展開が期待される。
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