弱電解質性の重合開始剤を用いたソープフリー乳化重合において重合pHを制御することで、ポリマー単独粒子を生成することなく、単分散な磁性ポリマー複合粒子を合成することに成功した。本重合系には、重合性シランカップリング剤で表面修飾したマグネタイトナノ粒子を導入し、無機粒子であるマグネタイトと有機ポリマー間の重合反応を促進させた。本系において重合pHを検討したところ、重合pHの相違が生成複合粒子の形態に大きな影響を及ぼすことを示した。すなわち、中性付近のpHでは生成複合粒子の分散安定性が維持されず複合粒子の凝集体が発生する一方で、塩基性pHではマグネタイトナノ粒子がポリマー粒子に内包されず、ポリマー単独粒子が多数発生することを明らかにした。以上の検討から、溶液pHを制御した水相析出重合は単分散な複合粒子の合成に適用可能であることを実証した。 さらに、複合粒子の凝集体あるいはポリマー単独粒子が発生しない中間のpH領域において、重合系内へのマグネタイトナノ粒子の導入速度を調整したところ、その導入速度の精密制御により複合粒子中のマグネタイト含有率を大幅に高められること示した。マグネタイトナノ粒子の導入開始時間は生成ポリマー粒子が重合系で安定化する直後が適切であり、これにより生成ポリマー粒子の単分散性を損なうことなく、マグネタイトナノ粒子をポリマー粒子と複合化できることを示唆した。合成した磁性ポリマー複合粒子は単分散性が高く、自己組織化によりコロイド結晶を形成した。
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