研究概要 |
活性コークスなどのような炭素質多孔体にマイクロ波を照射した場合,内部の細孔構造は複雑な微細形状を有しており,かつ導電性のため,微細孔空間や粒子間隙に大気圧プラズマが容易に生じる.このときプラズマ誘起ラジカル注入に伴う反応の非平衡化が生じ,細孔内での気相反応,気相と細孔表面間の不均相反応,触媒反応活性などが著しく向上し,反応率の増大が得られると考えられる.本研究では,このような機能に着目して,炭素質多孔体充填層にマイクロ波を照射しつつ,反応ガスを流通させて以下のような反応試験を実施し,反応活性の増大効果を反応動力学的に検証する.1)プラズマ発光の分光学的計測からのプラズマ発生挙動,2)NOxの炭素による還元反応,3)芳香族またはパラフィン系炭化水素の分解反応.また,これらの機能性を利用して,燃焼ガス中のNOx還元処理,バイオマスや石炭ガス化生成ガス中に含まれるタール成分の分解処理,炭化水素系気体燃料の水蒸気改質などの環境・エネルギー関連プロセスへ応用するための基礎的知見を得る.本年度は,上記項目1~3)について試験を実施し,次のような成果が得られた.1)充填剤に石炭活性コークスペレットを用い,アルゴンガスを流通させたときのマイクロ波誘起大気圧非平衡プラズマ発生条件とマイクロ波出力およびアルゴンガス流量との相関関係を示した.2)充填層下流側から窒素またはアルゴンバランスの一酸化窒素(NO)を流通させたとき,マイクロ波プラズマによるNOの無触媒・無還元剤脱硝効果が確認でき,脱硝率に与えるマイクロ波出力および反応場雰囲気の影響を明らかにした.また,分解ガスの分析からN20への転換はほとんど認められなかった.3)発光スペクトルの分光計測から窒素分子の第2正帯発光スペクトルが観察され,NOのプラズマ分解によるN2への直接還元効果を確認した.4)プラズマ中にベンゼン蒸気を導入した場合には著しいすす生成が観察され,化学的に安定なVOCに対しても分解処理応用への可能性を示唆した.5)マイクロ波による酸素プラズマ中での効果的な難分解性電気絶縁油の酸化分解効果を実証した.
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