本研究では、無機種・有機種の精密制御により合成した新規光触媒を用いて、高効率かつ選択的な有機合成プロセスを実現することを目的とする。固体表面上へバイメタル酸化物活性種を形成させることにより高度な光触媒機能を発現させるほか、光触媒材料に「触媒」活性点を導入した、高次の触媒機能を有する融合型触媒の設計・開発を行う。これらの検討を通して、従来の光触媒反応ではこれまで達成することの出来なかった有機合成プロセスを実現させることを目的とする。 平成22年度は、1)シクロヘキサンの選択的部分酸化プロゼスについて、シリカ源と有機基含有シリカ前駆体を用いるゾルゲル法により合成したCr含有シリカ触媒により検討した。本触媒は、可視光照射下でシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールを選択的かつ効率よく生成することを見出した。本触媒の高い活性は、有機シリカを前駆体として用いることによる、基質の触媒表面への強い吸着によることを明らかにした。また、2)CrおよびTiを同時に含有するシリカを触媒として用いると、シクロヘキサンの酸化が極めて効率的に進行することを明らかにした。この効果は、Cr-O-Tiの複合酸化物種が触媒上に形成されることにより、励起状態のCr種が安定化されるためであることを種々の分光分析により明らかにした。また、3)酸化チタン光触媒にPtナノ粒子を担持した光触媒をアルコールとアミンを含む溶液に懸濁させて光照射を行うと、.これらの化合物の縮合したイミンが高収率で生成することを明らかにした。本反応では、光励起により生成した正孔によりアルコールが酸化されアルデヒドを生成する。アルデヒドは、触媒表面のルイス酸点における脱水素反応によりアミンと縮合し対応するイミンを生成する。これらの光触媒および触媒反応が連続的に進行することにより、これまで達成されたことのない室温下でのイミン合成が可能となった。
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