研究概要 |
マグネトロンスパッタ法で作製した緻密な表面構造を持つインナーレイヤーと,可視光領域応答型のVis-TiO_2薄膜とを積層させた,積層型の薄膜光触媒を作製した。Vis-TiO_2薄膜の活性はインナーレイヤー成膜時の基板温度に依存し,インナーレイヤー成膜時の基板温度が473Kの時に最大となることを見出した。473Kの基板温度で成膜したインナーレイヤーはアナタース構造を有するため,その上に積層するVis-TiO_2ではアナタース相の結晶が成長し、TiO_2結晶の二次粒子径が減少し薄膜の表面積が増大したため水分解活性が向上したと考えられる。また、Vis-TiO_2は特異的な柱状構造を持ち,薄膜を形成する柱状の粒子間に空隙を持つ。この空隙に電解液が浸入し基板表面で水素生成などの副反応が生じることが,活性低下の原因の一つと考えられるが,インナーレイヤーで基板表面を被覆することにより副反応が抑制され,水分解反応の活性が向上した。さらなる活性向上を目的としてVis-TiO_2にHF処理を行った。インナーレイヤーの有無を問わず,HF処理により,その水分解活性が高くなった。さらに,積層後の可視光応答型酸化チタン薄膜光触媒において,HF処理による活性向上がより顕著に見られた。HF処理では,ルチル相よりもアナタース相が選択的に溶解する。このため,インナーレイヤーの導入によりアナタース含有率が高くなる積層型の可視光応答型酸化チタン薄膜光触媒において,酸化チタン表面の溶解がより効率よく進行し,活性向上の度合も顕著になったものと考えられる。さらに,これらHF処理を行った積層型酸化チタン薄膜を電極として用いると,グリセリンなどのバイオマスを燃料として発電可能な光燃料電池を構築でき,対極側にヨウ素レドックスを導入した2槽型の燃料電池を構築することで,発電効率が大幅に向上することが明らかとなった。
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