研究概要 |
1.ペプチド認識抗体の取得と検出への応用 前年度作製したファージ抗体ライブラリを用いてペプチド等を抗原とした選択を行ったが,十分特異的な結合クローンを得るには至らなかった。しかし,高病原性インフルエンザウィルスHA由来ペプチドを免疫したマウス由来ライブラリから,特異的クローン多数を単離することに成功し,このうち数種のクローンでOS-ELISAの実施に成功した。これらのFab断片を調製し,GFPと融合させたエピトープペプチドを発現させた疑似感染細胞を免疫染色したところ,有意な蛍光像を得ることが出来た(東京都臨床研芝崎愽士らとの共同研究)。以上より,我々のpDongシステムを用いてハイブリドーマを介さずOS-IAに適した抗ペプチド抗体を取得できることが示され,今後同様の手法で多数の検出系が作製できると期待される。 2.抗体産生ハイブリドーマを用いたOS-ELISA用融合タンパク発現系の最適化 L鎖産生ミエローマにIgMH鎖発現ベクターと,酵素SEAPをコードするターゲッティングベクタを導入するモデル系を用いて相同組換えによるIgM-SEAP産生効率向上のための条件検討を行った。この結果,発現ベクターを制限酵素で切断する部位が相同組換え効率に大きな影響を与えることが示された。今後ペプチド核酸PNAや亜鉛フィンガーヌクレアーゼZFNなどを用いてゲノム遺伝子を最適な位置で切断することで,組換え効率を飛躍的に向上できると期待される(東大先端研小宮山真教授らとの共同研究)。 3.無細胞系を用いた抗原結合により光る抗体の構築 無細胞蛋白質発現系を用いた抗体蛋白質の部位特異的蛍光修飾法を用いて,抗原結合によって蛍光強度が増強されるscFv(Quenchbody)の構築に成功した。すなわち,抗原非結合状態で抗体内部のTrp残基によりクエンチ(消光)されたTAMRA色素が,抗原結合により外部に放出され,顕著に蛍光を発することを,数種の抗体で確認した((株)プロテイン・エクスプレス阿部博士,JAIST芳坂教授らとの共同研究)。
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