研究概要 |
我々は、直径10μmの細胞サイズリポソームを用いて、秩序液体相(ラフト様ドメイン)特異的なエンドサイトーシス様動的構造変化(J.Phys.Chem.B 2007)、生細胞膜を模倣した非対称2層膜リボソームの構築(J.Phys.Chem.B 2008)やアミロイドβの膜局在、膜挙動(J.Phys.Chem.Lett.2010,Biophys.Chem.2010))に関する研究を進め、論文発表や特許申請など、積極的な研究活動を行ってきた。 平成22年度には、光異性化反応により非接触的に膜内の分子構造を変化させることで、分子間相互作用を変化させ、それが膜ゆらぎを変化させ、結果的に膜構造を円盤状から球状へと可逆的に引き起こさせること、そして、膜小胞形状の曲率安定性を理論モデルにより予測することに成功し論文発表を行った(J.Am.Chem.Soc.2010)。 培養細胞におけるラフト領域特異的なエンドサイトーシスを直接観察する事もでき、信号の伝達に微小管構造に沿ったラフト由来小胞の輸送が関与する新たなモデルを提唱している(投稿論文準備中)。 以上の背景に基づいて、膜面の変形、接着、あるいは物質との相互作用における秩序液体相(ラフト様ドメイン)の2次元的、3次元的特性を明らかにし、リポソーム研究と、細胞の分化シグナルの伝達研究を連携させながら、ラフト構造と細胞信号伝達の関連について、さらには分子構造と膜ダイナミクスの関連について、一定の成果を挙げることができたと考えている。
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