本研究では、申請者らが開発したトランスジェニック鳥類作製技術をベースにして、ニワトリなどの家禽鳥類をタンパク性医薬品などのバイオロジクス生産のための安全かつ安価な生体バイオリアクターとして使用するために必要な技術開発を行うことを目的に、(1)生産物を安定して大量に発現するための発現システムの開発、(2)生産物が糖タンパク質である場合に付加糖鎖の構造制御、(3)鳥類での生産に適したバイオロジクス生産、について検討している。(1)では、前年度に開発したtTA-TRE合成プロモーターシステムを組織特異的プロモーターと組み合わせたプロモーターを組み込んだレトロウイルスベクターをニワトリ胚に微量注入して遺伝子導入ニワトリを作製した。現在、レポーター遺伝子発現の組織特異性について検討を行っている。(2)に関しては、糖タンパク質として知られているヒトエリスロポエチンを抗体Fc領域との融合タンパク質として発現する遺伝子導入ニワトリを作製し、卵黄で生産された同融合タンパク質が血清で生産されたものと同様の糖鎖構造を有していることを明らかにした。(3)の検討として、スギ花粉症治療を行うために、スギ花粉アレルゲンエピトープを含む融合タンパク質を生産する遺伝子導入ニワトリの作製を試みた。7crpと卵白リゾチームの融合タンパク質発現用ウイルスベクターを胚に注入することで遺伝子導入を行い、胚培養によって人工孵化させたニワトリについて導入遺伝子の存在と発現を調べたところ、高い効率で導入遺伝子が検出された。遺伝子導入ニワトリが産んだ卵の卵白において融合タンパク質が生産されていることを確認した。
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