研究概要 |
リン脂質(DMPC)およびPEG系界面活性剤(C_<12>(EO)_<21>)から成るハイブリッドリポソーム(HL-21)のエイズ関連悪性リンパ腫の一種であるPrimary Effusion Lymphoma(PEL)に対する細胞増殖抑制効果とアポトーシス誘導について検討した。HL-21は、PEL細胞に対して顕著な細胞増殖抑制効果を示し、カスペースの活性化を経てアポトーシスを誘導することがin vitroで明らかとなった。また、HL-21は正常細胞への融合蓄積量が低く、PEL細胞特異的に融合蓄積し、膜の流動性を増加させた。PELのマウスモデルに対するHL-21の治療効果を検討した。HL-21は、PELモデルマウスにおいて明らかな腹水の蓄積抑制効果を示し、副作用もなかった。以上の結果より、HL-21が正常細胞には影響を与えず、腫瘍細胞特異的に融合蓄積し、細胞増殖を抑制することが明らかになった。(Leukemia Res.,34,906-911(2010)) DMPCおよびC_<12>(EO)_<23>から成るHL-23のヒト肺非小細胞がん(NSCLC)に対する細胞増殖抑制効果についてin vitroで検討した。HL-23は、がん細胞の増殖抑制効果を示し、アポトーシスを誘導した。さらに、蛍光脂質含有HL-23は、正常肺細胞と比較して、膜の揺らぎの大きなヒト肺非小がん細胞のみに融合蓄積した。ハイブリッドリポソームは、現在まで有効な治療法が確立していない、ヒト肺非小細胞がんに対する新規治療薬としての可能性が期待できる。(薬学雑誌,130,1581-1587(2010))
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