本年度は超音速流中にて誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge: DBD)を起こし、非平衡プラズマの超音速流中での性質を調べた。超音速流では主流マッハ数が大きいほど、つまりは主流静圧が低いほど放電が起こる最低印加電圧が小さくなることを明らかにした。また、分光計測の結果、非平衡プラズマから放出される発光スペクトルは亜音速流中で計測されたスペクトルと一致し、主に窒素分子や窒素分子イオンからの発光であることがわかった。壁圧計測、シュリーレン画像の撮影等により非平衡プラズマの発生は流れ場に全く影響を及ぼさないことがわかったが、それは非平衡プラズマの場合、ほとんど発熱がないためである。引き続き、静温を常温とした亜音速流中にて放電部に燃料を衝突させ着火実験を試みたが、印加電圧や燃料種に依らず着火に至らなかった。主流静温が低すぎたのが原因と考えられ、熱的な効果を有しない非平衡プラズマの着火促進効果が得られるのは、ある程度高温雰囲気下でなければならないことを明らかにした。一方、理論的研究においてはメタンの詳細化学反応機構(18化学種、101素反応モデル)を導入した3次元反応流解析コードを完成させ、超音速流中でのメタンプラズマによる着火過程の数値シミュレーションに成功した。プラズマ作動ガスに含まれるメタンがプラズマ中では水素分子、水素ラジカルに分解し、それらが主流空気と反応し水を生成している様子を捉えることができた。この反応による発熱がメタンを作動ガスに含むプラズマの着火促進効果を高めていることを明らかにした。
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