研究概要 |
将来の航空宇宙機用CFRP構造の信頼性・安全性の一層の向上を図るためには,工具落下や雹・鳥衝突等の異物衝突による衝撃損傷を非破壊的・自動的かつ実時間で検出する構造ヘルスモニタリングが重要となる.本研究では,圧電センサを内蔵したCFRP積層板,補強板,FWタンク等の構造を対象に,解析モデルを必要としない実験的衝撃荷重同定法に基づいて,異物衝突時の衝撃荷重位置・履歴を実時間で同定する手法を確立するとともに,同定した衝撃荷重履歴より衝撃損傷を実時間で検出する損傷モニタリング技術を開発することを目的としている.本年度得られた主要な成果は以下の通りである. 1. 本研究者が提案した解析モデルを必要としない実験的衝撃荷重同定法を適用して,インパルスハンマ打撃によるCFRP補強パネルおよびFWタンクの衝撃荷重位置・履歴の同定を行い,高精度の衝撃荷重位置・履歴同定が可能であることを明らかにした. 2. 衝撃時の圧電センサまでの弾性波の伝播時間差を用いた衝撃荷重位置同定法を新たに開発し,大幅な同定時間の短縮により実時間での衝撃荷重位置・履歴同定が可能となった.本手法をCFRP積層板,CFRP補強板,FWタンクに適用した結果,衝撃荷重位置および履歴は1秒以内での実時間同定が可能であり位置同定・履歴同定とも高精度な結果が得られた. 3. 圧電センサに加えて放射音を用いた衝撃荷重位置・履歴同定法を開発した.本同定法は,非接触であるため配線断線の危険性が無く,さらに,一定速度の音波を用いているため圧電センサによる弾性波に比べて衝撃位置同定の精度向上結果が得られた.また,放射音に及ぼす周辺からの雑音の影響を調べた結果,バンドパスフィルターにより雑音成分を効果的に除去できることが明らかとなった.
|