研究概要 |
計画初年度である今年度は,マイクロジェット噴射によるジェット騒音低減効果の確認,適切な噴射形態の解明,そして騒音低減メカニズムの解明を目的とし,実験を行うとともに,流れの数値解析手法を開発した。実験ではこれまでの予備実験の結果を踏まえ,様々な噴射条件でマイクロジェットを超音速主ジェットの勇断層に向けて噴射し,遠方場でジェット騒音の計測を行った。主ジェットは矩形ノズルから噴出し,ノズルリップ部に設けた多数の小さな空気噴射口からマイクロジェットを噴射している。ジェット勇断層に対して0°,60°,90°の角度でマイクロジェットを噴射し,騒音低減効果を比較した結果,60°および90°の噴射で騒音の大幅な低減効果が得られた。中でもノズル出口で主ジェットに対して90°の角度でマイクロジェットを噴射する形態により,主ジェットの1%以下という極めて少ない流量で,6dB程度以上の大きな騒音低減効果を得る可能性が示された。音のスペクトルを調べたところ,超音速ジェット騒音の主要素である乱流音,衝撃波管連広帯域音,およびスクリーチ音のいずれも低減されていたが,特に衝撃波に起因する騒音が大きく減少することが分かった。この効果の詳細な要因を探る手始めとして,シュリーレン法により流れを可視化したところ,マイクロジェットにより,超音速ジェット内の衝撃波構造が大きく変化する様子や,超音速コアが短くなる様子が明らかになった。しかし流れのメカニズムを明らかにするには至っておらず,今後流れの圧力の測定を行うべく,計測システムを設計・試作した。一方,流体数値解析の適用を目指し,従来開発してきた非定常流れ解析法を基礎に,ジェット流れ場の数値解析コードを開発した。以上のように,これまでの研究は順調に進行しており,特に非常に少ない流量のマイクロジェットにより,大幅な騒音低減の可能性を見出したことは意義が大きい。
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