研究課題
本研究では地上における宇宙環境試験条件の精査と実宇宙環境との詳細な比較、ならびに第3世代放射光施設など先進量子ビームを用いた高精度表面分析を併用することで、地上実験精度(定性・定量性)を向上させ、宇宙システムの信頼性向上に資することを狙う。具体的にはASTMにより定められているリファレンス材料をターゲットとして、期間内に以下の2つの疑問に対する明確な解答を得ることを目標とする。(1)宇宙と同じ反応を地上実験装置で模擬するには、どのような条件が必要か?(2)地上模擬実験に絶対的な定量性を求めるには、どのような条件が必要か?さらに、地上実験の精度向上を果たすために必要なリファレンスデータを軌道上で取得するという観点から、新規な宇宙曝露実験への要求も明確化する。上記の点を明らかにすることにより、地上材料試験の定性的・定量的向上を図ることが本研究の目標である。平成21年度には、昨年度に明らかになった「フッ素系高分子はレーザープラズマからの極端紫外線によりエロージョンが生じるものの原子状酸素との同時照射においても顕著な複合効果は見られない」という実験事実に基づき、この原因を解明するための実験を行った。実験の結果、ビーム中に含まれる原子状酸素のうち、高エネルギー成分がフッ素樹脂の材料劣化に大きく寄与していることが明らかになり、衝突エネルギーを性格に模擬すれば宇宙環境劣化シミュレーションが可能であることが示唆された。さらに、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜においても、膜内水素量の低下が原子ビームの衝突エネルギーに関連すること、金属添加DLCでは原子状酸素により表面にSiO2やTiO2の保護膜が形成されるが、DLC保護効果には添加金属依存性があることも明らかになった。来年度はこれらの結果を総括し、定量的な宇宙環境シミュレーション方法確立要件の整理、宇宙曝露実験への要求事項の確認と実現性評価等を行う。
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