研究概要 |
昨年度に引き続きスタンダードタイプ及び耐水性を向上させた粘土膜を積層複合化した炭素繊維強化プラスチックについて,極低温や荷重負荷後の水素ガス透過率試験及び極低温での機械的特性試験を実施した.その結果,改めて高い水素ガスバリア性能を確認することができたが,極低温衝撃や荷重負荷後の定量的な影響については今後とも検討が必要である.また,液体窒素及び液体ヘリウム温度における機械的特性として,粘土膜の引張り強度おいては1%,引張りせん断では1.5%近い破断歪になることが分かり,液体水素容器材料に適合する見通しが得られた. 今年度より粘土膜複合化炭素繊維強化プラスチックを利用した液体水素タンク構造様式についての研究に着手し,タンク本体および配管との接続口,接合部の構造様式について試作を重ねた.最終的に容積1リッターと4.3リッターの液体水素タンクの試作に成功し,水による耐圧試験及びヘリウムガスを用いた漏洩試験までを実施した.また液体水素タンクの試作と平行して,線膨張率の極めて小さい窒化珪素の口金を用いた粘土膜複合化炭素繊維強化プラスチック製の液体水素用の配管を試作した.耐圧試験およびリーク試験を実施後に実際の液体水素を用いた液流し試験を宇宙航空研究開発機構の能代多目的実験場にて行った結果,水素等のリークも認められず,液体水素配管としての健全性を確認することができた.次年度は,実際の液体水素タンク及び配管の設計仕様に基づく試作と性能試験を実施する計画である. 液体水素タンクの試作の副産物として,燃料電池車用の超高圧(700気圧)水素ガスタンクの試作も行った.粘土膜複合化炭素繊維強化プラスチックを水素ガスバリアの内穀とし,その外側に炭素繊維をフィラメントワインディングにより補強する構造様式を採用した.これについても本格的な性能試験を次年度以降に予定している.
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