本年度は、実海域でのマイクロ波パルスドップラーレーダによる実験、数値シミュレーションによる散乱の評価を行い、波浪水面から後方散乱するマイクロ波パルスドップラーレーダの出力と後方散乱する水面との関係をより詳細に調査すると共に、パルスドップラーレーダを用いる海洋波浪観測アルゴリズムを確立した。 パルスドップラーレーダの海洋波浪観測特性を調査するため、茨城県神栖市にある(独)港湾空港技術研究所波崎海洋研究施設砕波帯観測用桟橋にて、マイクロ波パルスドップラーレーダによる実海域実験を行った。ビーム幅16.8度のホーンアンテナを用いて行った実験では、ドップラー速度の分布がレーダアンテナ方向に進行していることが見られ、レーダが波浪の進行を捉えていることが確認された。計測したドップラー速度分布の変動から求める波浪の平均周期は約8.4秒、ドップラー速度の振幅は約1m/secであり、この値から推定される波浪の平均波高は約2.8mであり、現場での目測値と概ね一致していた。 マイクロ波照射線上から後方散乱するマイクロ波の多方向時間差ドップラー速度を用いて、波浪情報導出するアルゴリズムを開発した。開発した多方向波浪解析アルゴリズムの検証のため、海面形状及び海面の運動速度を数値的に生成し、その海面を対象に作成した波浪解析プログラムを用いて波浪情報を導出する数値実験を行った。数値実験では7つの入力波浪成分の全ての波浪特性値に対して、波浪解析プログラムは非常に精度の良い波浪推定が出来、入力海面形状と求めた海面形状の間によい一致が見られた。 実海域実験、数値ミュレーションによる波浪解析アルゴリズムの性能評価から、パルスドップラーレーダによる海洋波浪観測の可能性が確認された。
|