本年度は、マイクロ波パルスドップラーレーダを用いた実海域での波浪観測と数値シミュレーションによる海面でのマイクロ波後方散乱の評価を行った。 マイクロ波パルスドップラーレーダを用いた実海域波浪観測は、相模湾平塚沖1kmの設置されている東京大学海洋アライアンス平塚沖総合実験タワーにて行い、パルスドップラーレーダによる波浪観測アルゴリズムの有効性の確認とレーダを用いた新たな海洋観測方法の開発に挑戦した。パルスドップラーレーダによる波浪観測では平成21年10月8日の台風18号通過時の波浪状況を捉えることができ、パルスドップラーレーダによる波浪観測の有効性を立証した。また、レーダリモートセンシングにより、海面変位の計測が可能性であることを示した。本実験により、パルスドップラーレーダが海洋波浪、海面変位、海表面流れの海面の最も重要な3つの物理現象をリモートセンシングにより計測できる総合海象観測機器として有効であることが確認できた。 数値シミュレーションによる海面でのマイクロ波後方散乱の評価では、海面から後方散乱するマイクロ波の時間領域数値シミュレーション法を開発し、レーダが捉える海面からのマイクロ波後方散乱のシミュレーションによる評価を可能にした。開発した手法による波浪海面でのマイクロ波後方散乱の数値シミュレーションでは、後方散乱マイクロ波のドップラー信号を用いる波浪推定方法が後方散乱強度を用いる波浪指定より、有効であることを確認した。また、海面におけるマイクロ波の時間領域数値シミュレーション法は、航空機または人工衛星に搭載する合成開口レーダによる海洋観測にも有効な手段となる。
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