研究概要 |
造船所における作業安全に関するリスク解析手法の開発について,大きく次の三項目を設定し研究を進めた。 1)作業シーンあるいは作業状態に関連した不安全行動や不安全状態に進展する不安全要因毎のリスクレベルの設定;労働災害データベースの構築を進め,データベースを解析することにより作業および不安全行動との因果関係の抽出を行い,発生状況の環境状態や損失の程度について項目を設定した。なお,労働災害データベース構築には,日本造船工業会の取り纏めにより毎年発行されている「休業災害(含む死亡)報告書」を用いた。また実際の造船所においても協力を頂き,蓄積されている労働災害についてのデータについて資料収集と事故事象の分析を行った。 2)造船工場での作業観測による不安全行動・作業や不安全状態の定量化の検討;現状の作業の不安全状態の顕在化・定量化については,IE(Industrial Engineering)による作業観測方法を適用し,観測時点での作業とその作業の不安全行動・状態の入力を同時に行うことにより,これらの関連性を把握する作業・安全観測法の構築を進めた。観測データの入力と処理を容易にするための携帯情報端末(PDA, Personal Digital Assistant)を用いたツール構築を行いシステム開発を行った。このツールを用いて実際の造船所での切断,曲げ,小組立,大組立の各工程において作業・安全観測を行いツールの検証を行った。これらを用いてリスクアセスメントについて検討を進めた。 3)工場モックアップによる安全改善の検討;作業・安全観測によると,切断工程ではNCコンベア上での歩行に安全上の問題が検出された。このため,実験室内にモックアップの製作を行い,これを基にして歩行実験を行い,身体の不安定状態から,カオス解析を用いた安全改善の検討を行った。
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