本研究の目的は、主翼独立制御型水中グライダーを開発して、実海域における海洋環境モニタリングに資することである。平成20年度の研究実施計画は、(1)実海域での運用が可能な主翼独立制御型水中グライダーの浮力調整装置(浮力エンジン)の検討・開発、(2)水中グライダーの設計・開発、(3)制御用ソフトウェアの開発、(4)海洋環境モニタリングの計画・立案である。それぞれの計画に対する研究成果は、以下の通りである。(1)浮力調整装置には、「ピストン式」、「ポンプ式(油ブラダ)」、「ポンプ式(海水の注排水)」、「圧搾ガス式」があるが、詳細な検討の結果、深深度での運用を考慮して、ポンプ式(海水の注排水)を選択することにした。国内外では、要求を満たす製品がないことから、設計・開発を依頼した。(2)CFD(数値流体力学)解析による流体力の推定を行うとともに、水中グライダー耐圧容器の構造解析を行った。(3)水中グライダーの運動制御モデルを構築するとともに、現有の実験機ALEXを用いた水槽実験を繰り返し行い、制御系の設計・開発を行った。研究段階で明らかとなった問題点があり、平成20年度に完了できなかったので、研究費の繰越手続きを行い、平成21年度に研究を遂行することができた。(4)海洋環境モニタリングに必要となるセンサーの選択、解析手法の確立を目的として、研究分担者が所有する海洋乱流微細構造観測プロファイラーTurboMAPを用いて実海域での計測を試みた。本計測装置に主翼、尾翼を取り付けてグライディング実験を行った結果、準水平方向の計測が可能であることが明らかとなった。
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