研究概要 |
平成20年度は, 黄鉄鉱への選択的な皮膜形成に適したキャリアと皮膜構成イオン, 処理条件を探索し, 皮膜形成のメカニズムを明らかにするため, 黄鉄鉱と石炭試料に対するCME(キャリアマイクロエンカプセレーション)処理実験を実施した。 Ti^<4+>あるいはSi^<4+>のカテコール(1, 2-dihydroxybenzene, C_6H_4(OH)_2)錯体溶液10mlに粒子径106-150μmの黄鉄鉱あるいは石炭粉末試料を1g懸濁させて処理し, 溶液に残存する錯体量の化学分析, 固体産物のSEM-EDXなどによる表面分析を行った。その結果, 常温, 大気下で黄鉄鉱表面に選択的にTiO_2, SiO2(あるいはTi(OH)4, Si(OH)4)の皮膜が形成されることが確認された。黄鉄鉱への錯体の吸着は錯体濃度0.5mM, pH4-10の範囲で処理時間1h以内に起こった。 錯体の吸着量は大気下で処理した場合の方が, 窒素ガス雰囲気下で処理した場合よりも多く, 酸素が錯体の吸着と酸化皮膜形成に関与することが示唆された。また, 白金電極および黄鉄鉱電極上でのカテコールの酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリで調べたところ, 0.25V vs.Ag/AgClよりも貴な電位でカテコールが酸化分解すること確かめられた。これらの結果から, 半導体である黄鉄鉱の表面では, 吸着した錯体の酸化分解が起こってTi^<4+>やSi^<4+>が遊離し, これらの加水分解反応で酸化物皮膜が形成されるが, 不導体である石炭の表面では錯体の酸化反応が起こらないので皮膜が形成されないものと推察した。
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