研究概要 |
平成22年度は,黄鉄鉱/石炭の分離浮選に対するCMEの効果とメカニズムを昨年度に引き続いてさらに詳しく検討した。また,鉱山酸性廃水の発生原因となる黄鉄鉱の酸化溶解に及ぼすCME処理の効果も検討した。 Si-カテコール錯体溶液でCME処理した黄鉄鉱,石炭および未処理の黄鉄鉱,石炭に関してバブルピックアップ法による濡れ性試験を行い,ハリモンドチューブ浮選試験を実施して石炭/黄鉄鉱の浮選分離に及ぼすCME処理の効果を詳細に検討し,CEM処理が黄鉄鉱のみを選択的に親水化して、浮遊を抑制することを確かめた。これらの結果と表面分析・電気化学実験などの結果を総合して,CME処理による選択的浮遊性抑制のメカニズムについて考察し、半導体である黄鉄鉱表面上ではSi-カテコール錯体が酸化分解され親水性のSiO_2あるいはSi(OH)_4被膜が生じるが、石炭は不導体なのでSi-カテコール錯体のアノード分解反応が生じず、被膜が生成しないことによるものと推察した。 酸性鉱山汚濁水の発生抑制と関連して、黄鉄鉱の酸化溶解に対するCME処理の影響を検討した。Si-カテコール錯体を用いてCME処理を施した黄鉄鉱と未処理の黄鉄鉱のフラスコ振とう浸出実験を種々の初期pHの下で4週間にわたって実施した。CME処理を施すとpH1-6の広い範囲にわたって黄鉄鉱の酸化溶解が抑制された。浸出残渣をSEM-EDXで観察したところ、CME処理を施した試料では4週間が経過しても表面に形成されたSiを含む層が残存することが確認された。また,黄鉄鉱の溶解を促進する鉄酸化細菌の存在下でも浸出実験を行い、鉄酸化細菌の存在する条件下においてもCME処理が黄鉄鉱の溶解を抑制する効果を示すことを確認した。
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