研究概要 |
本年度は,AEの発生挙動とき裂内流体流動との関係について明らかにするために,AEならびにAEマルチプレットの発生挙動と,地下き裂内流体流動との関係について解析を行った. ここでは,地下き裂の流体流動とAEマルチプレットとの関係を調べるために,EUの高温岩体発電フィールドであるソルツ(フランス)で実施された水圧破砕による地熱貯留層造成時に誘発されたAEの解析を行った.坑井内検層データから推測される高透水性を有するき裂から放射されたと考えられるAEマルチプレットの発生間隔について,その頻度分布をワイブル分布により近似し,周期性の有無について検討した.その結果,貯留創造成中に発生する全AEについてみると,その発生間隔はランダムであることがわかった.一方,き裂内流体流の流速が速いと考えられるき裂から放射されるAEマルチプレットの場合,その発生間隔はある程度の揺らぎを有するものの周期性を有していることが分かった.本結果は,地下き裂内流体の流動による間隙水圧上昇と,それに伴うせん断滑り発生とAE放射が,繰り返し起こることに起因していることに起因すると推測された. AEマルチプレットについて,単位時間・単位注水量あたりのマグェチュードを調べたところ,坑井内の流出箇所に近い位置で発生したAEマルチプレットほど,その値は大きくなることがわかった.本結果は,流体流量が大きいき裂ほど,単時間の間にせん断滑りが繰り返し発生し,き裂に蓄えられている歪エネルギーが解放され,かつ,その解放に要する時間も短いためである,ということが推定された.以上の結果を国際会議で発表するために論文を執筆し投稿した.
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