研究概要 |
可視化三軸ベッセル甲で,孔付きのアクリル製エンドビースを岩石試験片に密着させて三軸圧縮試験を行い,試験片を出入りする間隙水の様子を観察した.最初にピストンの変位を固定して試験片に周圧を加えるとほぼ静水圧状態となる.この時点で試験片からしみ出した間隙水は上下のエンドピースの孔にたまっており,その様子が容易かつ明瞭に観察できた.その後,ピストンをベッセル内に押し込んで載荷すると,ピーク強度に達する時点までは,上下いずれのエンドピースの孔でも次第に水量が増えた.ピーク強度以降は,孔にたまった間隙水が徐々に試験片へと戻っていく.水を含んだ試験片で変位速度切換試験を行った場合,透水係数が高い場合は水の出入りは自由であり,変位速度が速くても遅くても歪の増加分に比例した水量変化が期待できる.一方,透水係数が低い場合は水の出入りに時間がかかるので,同じ歪増分に対して変位速度が速い時の水量変化は比較的少なくなる.このような試験結果から,透水係数を推定できる.この試験の特徴として,間隙水の様子が目視できること,そのため大きな間違いが生じる可能性が低いこと,変形・破壊特性と透水性の情報が同時に得られることなどが挙げられる.平成20年度の研究では,何種類かの岩石を用いて変位速度切換試験を精度良く実施し,それらの強度,ボアソン比,粘弾性的性質などを測定するとともに,水の出入りを観察して透水係数を定性的に推し量ることができることを示すことができた.この試験方法の応用の一つとして,トンネルや坑道周辺にできる緩み領域における透水係数の経時変化の測定が考えられるが,その測定に関する準備を整えた. 平成21年度の研究では,新しい方法で透水係数を求めるとともに,クロスチェックのために従来方法でも透水係数を求める予定である.また,研究にあたっては,新しい方法の特徴を生かした応用分野に注目して研究を進める予定である.
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