本研究は、ナトリウムライダーに用いる種レーザ(連続光レーザ)に関する周波数制御手法の研究であり、ライダー観測のコア技術の研究である。次の手法で種レーザの周波数制御をし、種から成長するパルスレーザの周波数を制御する(インジェクションシーディング技術)。種レーザ(1064/1319nm)の和周波で生成した589nm光を用いて、ドップラーフリー分光法により589nmのレーザ絶対周波数を特定の周波数にロックする。音響光学素子を用いてその波長からプラス/マイナスー定周波数だけ周波数シフトする技術を確立する。 周波数シフト装置はライダーに組み込まれ、最終年度は観測データの取得をしながら調整を行ってきた。種レーザの1064/1319和周波による589nmコヒーレント光の生成は、生成に用いる結晶の前の和周波アライメントをより精密に行うことにより、文献値を2倍上回る出力が得られた。コヒーレント光をナトリウムセルに通し、ドップラーフリー分光による絶対周波数のモニターと、コヒーレント光の周波数ロッキングは数MHz以内の精度で達成できており、観測に必要な充分なレーザチューニング精度を達成した。ただし、加熱セルが原因でロッキングエラーが生じることがあるので、改善を要する。音響光学素子(AO)を用いたレーザ周波数の高速変換システムは、光軸に対するAO素子入射角度の最適化により、周波数変換効率を最も高めることができた。周波数切替を行ってもインジェクションの光路がかわらないように調整することで、基準周波数±630MHzの3周波数の切替を、電気的に1kHz以下の精度で行うことを確認し、観測を継続した。この状態を確認した上、長時間観測により、システムの安定性の確認をした。また、得られたデータのナトリウム密度解析を行い、論文にまとめた。
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