研究課題
衛星リモートセンシングと陸域生態系モデルの組み合わせにより、陸域植生における主に地域スケール(数10km~1,000km程度)での炭素収支・水収支・熱収支を高精度で求める方法を確立することを目的として研究を行った。まずMODISデータと独自開発した陸域生物圏モデルBEAMSを用いて、極東アジア地域における炭素収支量の解析を1kmという高い空間分解能で行った。得られた純生態系生産量は、これまで既存研究で得られた植生のみの炭素収支量(総一次生産量や純一次生産量)とは大きく異なる空間パターンを示すことがわかった。植生とその直下の土壌微生物の活動は共存関係にあるため、陸域生態系を取り巻く環境が多少変化しても、単位面積あたりの炭素収支量は大きく変化せず、生態系が安定的に二酸化炭素を吸収すると考えられる。日本のような複雑な地形・地表被覆を持つ地域では、土壌も含めた自然生態系の炭素収支量を1km程度の高い空間分解能で推定する必要があることがわかった。また、いくつかの特徴的な陸域生態系に対しては、BEAMSによる炭素・水・熱収支の推定精度を向上させるための改良を行った。寒帯域では永久凍土層や積雪層の融解などのプロセスが炭素・水・熱収支に対して大きな影響を与えるため、これらを考慮できるように改良した。一方、アジアの温帯から熱帯域では水田が陸地のかなりの面積を占めており、炭素・水・熱収支の見積もりでは水田における様々なプロセスの影響を無視できないため、これらをBEAMSに組み込んだ。いずれの改良結果についても、地上でのフラックスタワーでの現地観測結果との比較を行い、改良によって、炭素・水・熱収支の推定精度が向上したことを確認した。さらに中国やインドシナ半島などのアジア地域における地表面被覆の変化が、炭素・水・熱収支や気候に与える影響を解析した。
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