CO2地中貯留事業が京都議定書で定められた排出権取引の対象と挙げられたことから、国際標準化(ISO)に向けた取り組みも本格化しつつある。地下深部の帯水層に圧入されたCO2について、その貯留量を定量的に評価することが一層重要になってくる。本研究において、本研究では室内実験で得た弾性波と比抵抗データを用いたジョイントインバージョン(joint-inversion)によるCO2貯留量評価手法の開発に取り組んできた。 平成22年度では不均質性に富む群馬県産の多胡砂岩と均質な米国産のBerea砂岩の超臨界CO2注入実験結果をもとに、地質構造とCO2地中貯留の安全性や不均質性が著しい帯水層に圧入されたCO2貯留量評価の有効性について比較・検討した。Gassmannの式を用いて弾性波速度データより、Archieの式を用いて比抵抗データより、砂岩試料中の超臨界CO2飽和度を推定した。二相流シミュレーションコードTOUGH2を用いて、砂岩試料に注入されたCO2の分布や飽和度を計算し、弾性波と比抵抗データから得た超臨界CO2飽和度の妥当性を評価した。さらに、弾性波トモグラフィ技術を応用し、砂岩試料中の超臨界CO2の移動特性を可視化し、微小なCO2流動に対する弾性波と比抵抗のレスポンスについて検討を加えることにより、万が一のCO2漏えいを早期に検出する技術の開発につなげた。 本研究では砂岩試料を用いた超臨界CO2注入の室内実験で得た知見を応用し、新潟県長岡市郊外で行われた日本初のCO2地中貯留実証試験サイトの物理検層(音波、比抵抗)結果を解釈し、その有効性を確認した。
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