研究概要 |
1) 貴金属含有溶液への適用性試験 都市鉱山として使用済み自動車触媒を対象に、その浸出液からの貴金属バイオ還元回収の適用性について検討した。その結果、多成分貴金属の混合溶液に対して金属イオン還元細菌(Shewanella属細菌)を用いた場合には、各貴金属イオンのバイオ還元・析出速度に顕著な違いが認められたうえに、両金属のバイオ還元・回収は60分程度の短時間内に完了することが明らかになった。各種貴金属の混合溶液を対象に、バイオ還元・析出を適用して各金属を相互分離できるという新たな可能性が見出された。 2) バイオ還元による貴金属回収装置の開発 貴金属含有溶液の大量処理を目的に、単一槽型反応器を連続方式(原料溶液・細菌の供給、生成粒子・細菌懸濁液の排出)で操作し、還元細菌によるパラジウムの回収試験を行った。供給液パラジウム(II)濃度を500ppmに高めて平均滞留時間を20秒にまで大幅に減少させても,パラジウム回収率が95%以上に達した。本年度におけるパラジウムの最大回収速度は95kg/(h・m^3)にまで達しており、昨年度の回収速度(0.64kg/(h・m^3))に比べて飛躍的にパラジウム回収速度を向上させることに成功した。 3) バイオ利用貴金属回収システムの提案 現行の湿式回収プロセスにおける物質フローと比較すると,還元細菌を利用する貴金属回収システムは,希薄溶液からの貴金属の分離・濃縮工程から金属ナノ粒子調製工程に至る多段階工程をワンステップで達成できる統合プロセスとなることがわかった。このため,この新技術は環境低負荷型ナノ技術としても捉えることもでき,貴金属の高付加価値化リサイクル技術としての展開・実用化の可能性が示唆された。
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