研究概要 |
軽水炉の高経年化に伴う原子炉圧力容器鋼の照射脆化は監視試験片により評価されているが、本試験片は無荷重の状態で照射が実施されている。また、加圧水型軽水炉(PWR)は沸騰水型軽水炉(BWR)に比べて照射速度が1桁ほど高く材料試験炉ではさらに3桁ほど高い照射実験が実施されており、より信頼性の高い脆化予測を実施するには、これらを考慮した脆化モデルを構築する必要がある。本研究では実機により近い動的照射環境(負荷応力・照射強度が変化)でのマトリクス欠陥(格子間原子及び空孔型転位ループ)形成過程に注目して、鉄イオン照射中の内部組織及び磁気(電気)的特性評価を実施することにより、本材料の脆化メカニズムを明らかにする目的で平成20年度から4年計画でスタートした。 最終年度である平成23年度は昨年度に引き続き、圧力容器鋼(A533B鋼)及びそのモデル合金の応力依存性を追求した。また、昨年度実施されたイオン照射環境下での磁気的並びに電気的特性の評価を行うと同時に本研究の総括の為に、関連研究者による研究会を岩手大学・工学部で実施(平成24年1月16-17日)した。昨年度はモデル合金としてFe-1.4Mnを用いて研究を実施し、弾性領域内での負荷応力においても硬さが無負荷に比べ10-20%程度上昇し、これは応力により導入された転位密度とサイズの上昇に密接に関連することが明らかになった。昨今年度は、モデル合金の詳細な検討を実施すると同時に、実用鋼における脆化機構についてモデル合金と比較を行った。また、既存のHVEMホルダーを用いて電子線のその場観実と結果の応力下での組織変化に関する理論的考察を行い、研究成果の一部を照射効果に関する国際専門家会議である16^<th> IGRDM (Santa Barbara, USA)にて下記の題目にて報告した。今後、さらに詳細な解析を行いながら、実機における応力効果について考察し研究論文として公表予定する。 The Effect of Stress on A533B Steels and Model Alloys under Irradiation, H.Watanabe, N.Yoshida, K.Kamada and K.Dohi
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