研究概要 |
今年度は、研究代表者の職場異動に伴い、実験装置の移設と再構築を行った後、2,3-ジヒドロピラン(C_5H_8O)の赤外多光子励起による振動励起分子の過渡吸収スペクトル測定とC_5H_8Oのラマン散乱スペクトル測定を行った。 振動励起分子の過渡吸収スペクトル測定に関しては、照射セルにつめた試料圧約900PaのC_5H_8Oに炭酸ガスレーザー光(発振振動数1050.4cm^<-1>、フルエンス0.49J/cm^2)を照射し、照射試料に炭酸ガスレーザー光軸と直角方向に重水素ランプからの紫外光を透過させることで紫外光吸収スペクトルを測定した。その結果、振動基底状態のC_5H_8Oの紫外吸収スペクトルピーク(約225nm)の長波長側のすそ(238-257nm)にレーザー照射後0から3μsecの間に振動励起C_5H_8O分子に起因すると思われる過渡吸収スペクトルを観測した。また、ラマン散乱スペクトルに関しては、Nd:YAGレーザーの2倍波(532nm)を励起源として、C_5H_8O(試料圧3.1kPa)のラマン散乱スペクトルを測定した。その結果、557nm(振動数844cm^<-1>)にラマンスペクトルピークが観測できることを確認した。今年度、時間分解ラマンおよび紫外光吸収スペクトルを測定できることを確認できたので、来年度は、六フッ化珪素も含めて、振動分布の時間変化および分解速度の試料圧依存性を測定し、赤外多光子解離過程における分子間衝突の効果を明らかにし、同位体分離に及ぼす影響について考察する。
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