研究概要 |
固体高分子形燃料電池の不透明な電極間に挟まれた高分子電解質膜内における水分分布を計測するために,波長1470nmの近赤外レーザーシート光を用いた計測システムを構築し,改良した.このシステムを用いて,供給ガスによる電解質膜の水分分布特性を計測したところ,燃料である水素ガスを加湿した場合と加湿しない場合で,ガス供給流路近傍における水分分布が異なることがわかった.燃料水素ガスを加湿すると,電解質膜中の水分分布はガス供給流路近傍に偏るのに対し,加湿しないと,電極反応面全体に水分分布が及ぶことがわかった.しかし,無加湿の場合は,加湿した場合に比べて,トータルの含水量が少なく,燃料電池運転開始からの立ち上がり時間が遅くなる傾向がみられた.これらの結果は,電池反応による生成水は電極面全体で生成するのに対し,加湿水は流路近傍に偏ってしまうことを示唆する.さらに,得られた水分分布を定量的に扱うために,計測後の燃料電池から電解質膜を取り出し,重量法によって正味の含水量を求めた.これにより,定量性のある水分分布を得ることに成功した.
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