今年度は以下の成果を得た。 1.(a) これまでのTEM観察結果から、γ-Fe203/炭素複合体中ではγ-Fe203粒子と接していない炭素が多くあることわかってきたため、導電性を保ちながらも炭素部分を減らすことが可能であると考え、導電性炭素であるケッチェンブラックの合成時における投入量を変化させることで複合体における炭素量を調整した。比表面積測定結果や充放電容量をγ-Fe203含有比に対してプロットすると、直線関係となり、γ-Fe203含有比0あるいは1に外挿することで比表面積および容量に対する炭素、γ-Fe203それぞれの寄与を定量的に明らかにすることができた。 (b) 放電後の状態で電池を組むことで電池作製中に放電して大きな事故となることを防ぐことができるため、リチウムを成分として含むLixFe203の合成を目指した。その結果、濃度の異なるn-ブチルリチウムのヘキサン溶液を用いて、さまざまな量のリチウムが化学的に挿入された試料が合成できた。これらの試料については次年度に種々の電気化学的特性を明らかにしていく。 2.電気化学反応前後でのスピネル構造の種々のパラメータ(格子定数、酸素パラメータ、四面体サイト、八面体サイトの原子の割り当て、占有率など)を求めるために、充放電後のセルから電極を取りはずしてex-situX線回折測定を行い、リートベルト法を行った。この結果、スピネル構造から岩塩構造に至る過程でのサイトの占有率の変化が明らかになった。 3.リチウム量を変えた試料を準備する際の電気化学セルの工夫、X線回折測定を行う際の気密セルの利用法、ガス充填などが他の材料系(LixCoV308など)にも適用できた。LixCoV308においては、結果としてリートベルト法による詳細な構造解析によりリチウムインターカレーションサイトがほぼ決定できた。
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