研究概要 |
本年度は交流インピーダンス測定によりファラデー反応による容量と非ファラデー反応による容量との分離に成功した。KBとγ-Fe_2O_3からの非ファラデー容量(回路成分としては容量成分)、詳細な反応は不明であるが、可逆な容量であるKBのファラデー容量(回路成分としては電荷移動抵抗と容量成分の並列回路)、γ-Fe_2O_3のファラデー容量(回路成分としては直列で接続した電荷移動抵抗と有限拡散成分に並列接続した容量成分)とを含む等価回路を用いることで良好に最小二乗解析でき、等価回路中の各成分が決定できた。得られた非ファラデー容量を定電流充放電で測定された容量から除いて全ファラデー容量を算出すると、γ-Fe_2O_3含有量に対して原点を通る直線関係となった。したがって放電過程におけるファラデー容量は、ほぼ全てγ-Fe_2O_3に起因することがわかり、γ-Fe_2O_3重量当たりの放電容量は約235mAh/gと求められた。これらと同時に、交流インピーダンス測定から、リチウムの化学拡散係数を求めることができた。試料中のリチウムイオン挿入量に対して、約10^<-14>から10^<-17>cm2/sへと大きく減少することがわかった。また、高速充放電に向け、より小さなγ-Fe_2O_3粒子を得るため、溶液中のFe^<2+>の急速酸化を目指して酸素バブリングの方法や飽和酸素溶液への微小液滴滴下法の工夫を行った。その結果、電流密度0.1, 1, 10, 50A/gでそれぞれ容量185, 155, 130, 80mAh/gを示す試料が得られた。すなわち充電あるいは放電に要する時間はそれぞれ110、9分、47、6秒であり、高速充放電においても高い容量の試料を得ることができた。
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