昨年度までに明らかにしたように、以前は電気化学的に不活性と見られていたγ-Fe_2O_3であっても、炭素材料と複合化することでリチウムの可逆な挿入が可能であり、しかも高速充放電が可能である。この高速充放電特性を生かすことで、キャパシタ電極としての利用が期待された。そこで、本年度は、現在、電気二重層キャパシタの電極材料として用いられている活性炭素材料と複合化することで、リチウムインターカレーション反応を擬似容量として利用した電気化学キャパシタの正極材料とし、新たな電気化学キャパシタの正極材料の開発、エネルギー密度の向上を目的とした。炭素材料としては、すでに実用されている材料として、フェノール樹脂を原料とした高純度活性炭(クラレケミカル、RP20)あるいは天然素材のヤシガラを原料とした活性炭(クラレケミカル、YP50F)を用い、温度、pH、酸素バブリングなどのγ-Fe_2O_3との複合体を作製する条件を確立した。その結果、RP20の場合には、電流密度1Ag^<-1>では、RP20単独では、90mAhg^<-1>であったが、複合化によって127mAhg^<-1>へと約40%の容量増加が得られた。同様に、10Ag^<-1>の電流密度では、50mAhg^<-1>から90mAhg^<-1>と80%の容量増加が得られた。また、YP50Fでは、電流密度1Ag^<-1>では、YP50F単独では80mAhg^<-1>であったが、複合化によって120mAhg^<-1>へと約50%の容量増加が得られた。同様に、10Ag^<-1>の電流密度では、48mAhg^<-1>から86mAhg^<-1>と約80%の容量増加が得られた。これらの電流密度および容量は、いずれも電極材料全体の重量基準である。以上から、γ-Fe_2O_3の疑似容量を利用することでキャパシタカーボンの容量が大きく増大できることが示された。
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