研究概要 |
ヒトや高等植物を含む多くの生物では、その活動や生理活性が細胞内分子機構である生物時計によって24時間周期の振動を示す。ゲノム研究の結果、植物系(高等植物、緑藻、藍色細菌)の生物時計は構成分子が互いに異なっていることが示された。 藍色細菌の生物時計は、KaiA、KaiB、KaiCから構成されている。我々は、Kaiタンパク質複合体の構造とその会合・解離の分子機構の解明を進め、KaiA-KaiB間の相互作用を証明し、相互作用部位を同定した(Mutoh et al., 2010)。同様に、KaiB-KaiC間、KaiA-KaiC間の相互作用の相互作用部位の同定も進めている。また、KaiBの構造が温度などの条件により変化することを明らかにした(Mutoh et al.,in press)。そして、KaiBでは、その構造がKaiCに対する結合親和性に影響を与えることを明らかにした(Murakami et al., 論文準備中)。 我々はこれまでに、クラミドモナスの葉緑体ゲノムにルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ生物発光レポーター株を作製し、時計遺伝子群をクローニングした。本研究では、これら時計タンパク質の、DNAとの結合の有無や時計タンパク質問の複合体形成に関して解析を進めた。また、核からミトコンドリアや葉緑体への時間情報伝達の機構を解明するため、クラミドモナスの核ゲノムの使用コドンに最適化した赤色ルシフェラーゼ遺伝子(鉄道虫由来)を人工合成し、核ゲノムに組み込んで核のレポーター株を作製した。 高等植物の真の生物時計遺伝子はこれまでクローニングされておらず、我々がシロイヌナズナでクローニングしたpcllが世界初である。我々は圧倒的な処理能力のある生物発光リアルタイムモニタリング・スクリーニングシステムを、JST受託事業で開発し、シロイヌナズナにおける研究への発展的拡張を目指した。
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