研究概要 |
真核細胞の染色体DNA複製は、一回の細胞分裂周期につき一度だけ過不足なく起きるように厳密な制御を受けている。細胞は、1)S期に染色体DNA複製を開始させる活性と、2)染色体DNAの再複製を阻止する活性を巧妙に組み合わせることで、この制御を成立させている。本課題では「染色体DNA複製の開始反応」を分子レベルで理解することをめざし、解析を行っている。複製開始反応系に関わる因子は以下の4種類に大別できる。1)pre-RCに含まれ、複製フォークには含まれないもの、2)pre-RC、複製フォークの両方に含まれるもの(Mcm2-7)、3)pre-RC、複製フォーク共に含まれないが複製フォークの形成には必要なもの(Sld2,Sld3,Dpb11)、4)pre-RCに含まれないが、複製フォークには含まれるもの(Cdc45, GINS, Polε他)。これらの因子のうち、Cdc45、GINS、Mcm2-7が開始反応によって複合体を形成し、活性型ヘリカーゼを形成することが種々の生物で示されている。ここでは細胞周期進行を制御するCDKが複製開始に必要である。CDKのターゲットのひとつであるSld2のリン酸化模倣型変異とGINSの高発現を組み合わせると弱いながらもCDK無しで複製開始させられることがわかった。そこで、GINSがCDKのターゲットになっているかどうかを解析した。その結果、GINSリン酸化は開始反応には必要でないことがわかった。この結果はGINSはリン酸化される因子と密接な関わりを持って働いていることを示唆している。また、複製開始反応はそれぞれの複製起点によって固有の時期を持つことが知られている。この問題にもアプローチを開始し、複製開始タイミングが変わる変異を得た。こういった変異の解析と、上述の各因子の解析を続け、所期の目的達成を目指す。
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