樹木の成長や機能の研究は、「樹木個体はモジュールであるシュートの集団である」(Harper 1977)というドグマのもと、「枝の自律性」(Sprugel et al.1991)を前提として行われる場合が多い。「枝の自律性」とは、ある枝で生産された光合成産物はその枝で使われ、隣接する同齢枝やより上流にある枝には転流しないことを意味している。篠崎ら(1964)は、樹木の枝の葉量と、その枝の断面積が比例することを見出した。この関係は、「パイプモデル」関係とよばれる。Sone et al.(2005)は、落葉樹についてパイプモデル関係を検討し、枝の肥大成長は、その枝の光合成生産量だけではなく、枝の優先度(たとえばその枝の当年枝中の長枝の割合などで表現できる)にも大きく影響されることを明らかにした。すなわち、枝の成長はその枝の光合成量(供給量)だけで決定されるのではなく、枝にその光合成産物の需要がどの程度あるのかにも依存する。 今年度も昨年度に引き続き、ウリハダカエデを用いて、摘葉処理などによってパイプモデル関係を撹乱し、そこからの回復過程を解析する研究を続けた。枝間に明確な負のフィードバック機構あるいは相互依存性が存在するので、それを定量的に裏付けるために、13CO2を用いたトレーサー実験を続けた。1)側枝から先端の主軸へ転流しているか、2)下流の合流枝への転流は各上流枝の葉面積に比例するか、それとも枝の伸長に依存するのか、3)篩部、当年木部、前年以前の木部で上記の分配パターンは異なるのか、を検討するために、一年枝の側枝にビニルバッグをとりつけて光合成によるラベリングとサンプリングを行った。 また、西オーストラリアの乾燥地や塩害地に植栽したEucalyptus globulusの成長を、成長解析の手法を適用して解析した。その結果、純同化率の差が成長の差をもっともよく説明した。呼吸速度の違いが、成長の差をもたらすようである。
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