研究課題/領域番号 |
20370009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
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研究分担者 |
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
吉田 丈人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40447321)
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (60372835)
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
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キーワード | メソコスム / 次世代シークエンサー / 表現型可塑性 / 被食者 捕食者 / 適応的食物網 |
研究概要 |
水界生態系の一次生産者および高次捕食者にみられる表現型多型・可塑性が食物網構造や動態に与える影響を実験的に解析し、適応的食物網に関する理論を構築することを目的として、以下の4つの課題を実施した。 1)魚類栄養多型の遺伝的基盤解明 魚類における湖沼適応形質の遺伝的基盤を解明するために、タモロコ属魚類のF2交配家系を用いた連鎖地図の作成および湖沼適応に開連した形態のQTL解析をけった。次世代シークエンサーを利用したRADシークエンシングを行い、多数のSNPマーカーを作成した。得られたマーカーを用い、高密度連鎖地図を作成した。さらにQTL解析を行ったところ、湖沼型-河川型ペア種間における採餌関連形質や体型の違いの多くは、効果の小さい複数の遺伝子座に支配されることが示唆された。 2)魚類栄養多型の生態系影響の実験的解析 魚類の栄養多型がプランクトン食物網に及ぼす影響を実験的に解析したところ、ベントス食魚の存在によって食物連鎖長け有意に長くなる一方、バイオマスで重みづけされた平均栄養段階は有意に短くなるという結果が得られた。前者はサンプリンブエラーのArtifactを含みうるが、後者は栄養関係を介したシステム全体のエネルギー流を記述する指標として有効であり、魚類の栄養多型効果が食物網全体にトップダウン的に波及することが実証された。 3)餌藻類の可塑性がワムシ捕食費-餌藻類系の個体群動態に与える影響 前年までの実験により、藻類のイカダキが捕食者から放出されるカイロモンに反応して、捕食されにくい形態である群体を可塑的に形成することがわかった。しかし、イカダモの群体形成における可塑性はクローンによってさまざまであり、表現型可塑性が個体群動態に与える影響を実験的に調べる当初の目的は達成困難であることがわかった。そのため、数理モデルを用いた理論的解析を実施し、表現型可塑性が個体群動態を安定化させる効果は、他の適応メカニズムである進化的変化の効果より大きいことを確認した。 4)適応的食物網の理論的解析 食物網の構造は生物の適応的餌戦略によって説明できる可能性が知られでいるが、餌としての適合度は捕食者・被食者の体サイズ比に影響を強く受ける。だが、体サイズはその測定の方法によって大きく変動する可能性があり、またその変動の仕方は注目する生物学的レベルに依存することを突き止めた。また、干潟の食物網が典型的なギルド内捕食構造をとり、(捕食者(鳥類)の適応的なエサ選択がその安定性に深く関わる可能性を示唆した。
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