研究課題
基盤研究(B)
湖沼生態系の一次生産者である藻類および高次消費者である魚類にみられる表現型可塑あるいは表現型多型が食物網の構造や安定性、生態系機能に及ぼす影響をミクロコスムおびメソコスム実験系を用いて検証した。さらに、魚類の栄養多型の遺伝的基盤を解明するために、トランスクリプトーム解析やQTI、解析などの分子生物学的技術を導入した。プランクトン食者一ベントス食者ペア種を用いた解析の結果、摂餌関連形質の発現が小さな相加的効果を持つ多遺伝子座によって支配され、遊泳能力に関与する遺伝子が異なる系統問で共通の発現パターンを示すことが明らかとなり、沖合適応の収敏進化を示唆する興味深い知見が得られた。また、魚類の沖合適応に伴う栄養形質の多型化がプランクトン食物網構造(食物連鎖長、被食・捕食者体サイズ比、群集平均栄養段階)にトップダウンの栄養カスケード効果をもたらし、生態系機能の指標である群集呼吸を改変することを実験的に示した。最後に、数理モデルを用いて、これらの表現型の可塑性や多型性が食物網の構造や安定性に影響しうることを確証した。
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