ヤナギの幹を摂食するコウモリガの幼虫の食害により、ヤナギの再生長が促進され、これによって植食者と捕食者の種多様性と個体数が増加することが明らかになった。さらに、窒素レベルのヤナギ個体問の変異が多様性要素と密接に関係していることがわかった。また、ダイズに共生する根粒菌は地上部の成長を促進させ、窒素レベルが増加すること、これによってダイズの植食者の種多様性と個体数が増加することが明らかになった。 中央日本の複数の河川に生育するヤナギの再生長反応の強さは場所によって異なっており、再生長反応が強い場所ほど、新葉に対するヤナギルリハムシの成虫の好みが強いことがわかった。また、室内での集団遺伝学的実験により、新葉に対するヤナギルリハムシの成虫の好みは短い世代時間で進化することが明らかになった。これらの事実から、場所に依存した再生長反応の強さに対応したハムシの適応進化の可能性を示した。 ヤナギ属7種の揮発性物質の解析を行い、嗅覚計を用いて、天敵誘引性、植食者誘引性、同種異種の他個体ヤナギの誘導防衛の強さを評価した。この結果、ヤナギ種によって天敵誘引性が異なり、それが直接防衛と負の相関を持つことがわかった。生態学研究センターの圃場において、同定された揮発性物質の機能を野外で実証するための操作実験を行い、ヤナギ個体間で揮発性物質を介したコミュニケーションがあることを明らかにした。 季節的に出現する植食者に対する植物の防衛スケジュールの理論的研究により、植物が植食者に備える恒常防衛と誘導防衛のそれぞれに関する進化条件が明らかになった。特に、植食者の食害の程度が著しい場合には、かえって事前の防衛を手控えて「誘導防御」的な性質を進化させるという予測がえられた。
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